8m x 8m
Iromiya Elementary School
Commemorative Project
Mural Making Workshop
旧・色宮小学校 杉原校長先生
旧・色宮小学校 金田教頭先生
『未来へはばたけ米水津壁画プロジェクト』
– 地域民参加型・色宮小学校閉校記念壁画制作・米水津(よのうず)いろみやキャラリンパ –
『閉校になる色宮小学校にキャラリンパ壁画を!』
そんなことを米水津の万平さんが言った。
閉校する校舎に壁画をつくるの?どうして?
『来春、色宮小学校(全25人)と向陽小学校(全40人)が統合して米水津小学校が誕生する』
過疎化する漁村にはこどもが少ないからだそうだ。
米水津は大分県の南東部に位置し、佐伯市内から山を越え車で40分程、空の公園からの眺望や、鶴見までの海岸線、間越海岸のはまゆうなど、潮風香る集落だ。
2つの小学校の統合に際して、老朽化した向陽小学校校舎を取り壊し(大規模改修?)、そこに新校舎を建築するらしい。それが米水津小学校の新校舎となる。
建設中の2年間は今の色宮小学校の校舎をそのまま米水津小学校として使用するのだそうだ。
だからこの壁画は色宮小学校の閉校記念モニュメントであり、新しく誕生する米水津小学校の開校モニュメントでもある。
2年間限定の校舎使用ではあるが、壁画を施した校舎は統合した2つの小学校のこどもたちで賑わうことになる。
それではその後(2年後)、校舎はどうなるのか?
地元議員の万平さんの頭を悩ますところであるが、、、。
いづれにせよ閉校という〝ネガティブな出来事〟を敢えてイベント化し、こどもたち、地域を励まし元気づけようとする、万平さんの思い描く〝ストーリー〟を面白いと感じた。
キャラリンパ壁画とは『地域民参加型アート』を基本概念とした、こどもの『今』の感性を壁画として永久に残そうというとりくみで、佐伯(ルンビニ幼稚園)発のアートプロジェクトとして展開中。
そして、それはこどもの『今』を残す為に地域の大人たちが奮闘するアートなのだ。
一言で『残す(存在させる)』という言葉を使うが、実はそう簡単ではない。形あるもの、色彩あるものは時間の経過ともに必ず壊れるし、褪せてゆく。
キャラリンパ壁画はペンキ類(アクリル系)で描くケースと、漆喰(石灰・フレスコ系)に描くケースが主な選択肢だ。
ペンキで外壁に施工(壁画)すると数年で色彩が退色する。
キャラリンパ壁画は『色彩鮮度』にこだわっているため、ペンキ使用の場合は〝施工から3年で描き変え方式〟を推奨している。(ルンビニ幼稚園・園庭壁画参照)その場合は、壁自体が教材(画用紙)の意味をもち、絵を残す事に重点は無い。
今回、色宮小学校での壁画は漆喰(石灰・フレスコ系)を選択、『イタリア古典技法のズグラフィート(漆喰刻画)』を採用した。
外壁でははじめてのチャレンジとなる。(※キャラリンパ企画としてははじめての試み)
前回、屋内壁画 ※ケアタウンながと『見上げると笑顔になる天井画』で用いた技法と同じである。
この技法はとにかく作業工程が多く、プロセスに膨大な労力と時間を要する。
学校関係者、地域の方々が〝いっしょに想い出に残るものを創りたい〟と申し出てくれた。
閉校記念モニュメントであり開校記念モニュメントであるというニュアンスもユニークに感じたし、生徒が新校舎に移った2年後の学校がどのような使われ方になるのかにも思いを馳せ、壁画が存在する事であたらしい地域のランドマーク校舎の展開をかんがえれないか?ともイメージした。
斯くして、2015年12月12日(土)、色宮小学校閉校まで111日、体育館にて原寸大原画作りのワークショップが開催され『未来へはばたけ米水津壁画プロジェクト』はスタートした。
壁画家・佐倉康之
空を見上げた。
途中で枝に引っかかりそうになりながらものぼってゆく風船に向かって、一人のおじいさんが『がんばれー』って声を張った。みんなが大きく手を振っていた。いろとりどりの風船にはこどもたちの夢が書かれている。
背景には美しい壁画があった。
みんなで作った最高の壁画だ。
潮の香りがしていて、桜はまだ蕾だったが、色宮の人たちは満開の笑顔。
いい閉校式、いい壁画の除幕式だった。
色彩の余韻に浸りつつ、米水津から東京へ戻る。
羽田空港からモノレールで浜松町へ向かう窓越しに見える風景は、コンクリートとガラスの建築物と働き盛りの人たち。2020年には東京オリンピックも開催されるしイケイケの大都会だ。
一方で地方はこどもが少なく2つの小学校が統合して1つの小学校が生まれ、2つの小学校がなくなってゆく。
それにしても、色宮小学校の25人のこどもたちはいい顔していたな。
輝いている笑顔ってああいうのをいうんだろうな。
地域の人たちに愛情いっぱいに育てられている感じ。
閉校の寂しさを感じさせないように、先生方はこどもたちに様々な目標を与えたのだろう。
〝みんなで作る壁画〟もその一つになれてよかった。
壁画一つで地域が活性化するとも思わないが、少なくともピカピカの壁画がある小学校が誕生したし、地域の大人たちの心意気や、壁画が発するクリエイティブでポジティブなエネルギーが何かを変えてくれると信じたい。
除幕式の前日に色宮小学校を訪れると、杉原校長と老人会のおじいさんたちが壁画の前のソテツを伐採している最中だった。壁画をより眺めやすくしたいとのこと。
僕が壁画を眺めていると、5人のおじいさんが意気揚々と一斉に作品解説を始めた。熱の込もった佐伯弁(米水津弁)が嬉しかった。
〝イタリア古典技法ズグラフィート壁画〟のプロセスを、制作中の苦労を喜びをこの地域の人たちはみんな語れるのだ。
壁画を依頼してくれた米水津の万平さんは、人生の先輩たちにこういう〝贈り物〟をしたかったのだと思う。
『芸術はわからんのや』そう笑いながらも一生懸命壁を削っていた万平さんの横顔が浮かんだ。
壁画作りは、今いる場所を、最高の場所に変えていける。
『パワースポットを創ろう!みんなで壁画を創っていこう』
僕があの日、あの風船に込めたメッセージだ。
佐倉康之 壁画家
2016・3・末日 東京にて
Iromiya Elementary School / 旧・色宮小学校(現・米水津小学校)
大分県佐伯市米水津大字色利浦1742
Dec, 2015 – March, 2016